素直になれない、金曜日
行き場のない心をどうにかしようと、はあ、と息をついた。
あのとき、私、全然嫌じゃなかったんだ。
恋人同士でもないのに唇を触れ合わせて、ふつう……そんなことしないのに。
嫌じゃなかったの。
むしろ、このまま時が止まればいいのに、なんて。
心のどこかでそう思っていた。
だから、拒めなかったんだと思う。
こんなことを思うなんて、私……おかしいのかな。
考えすぎて頭がパンクしそうになっていたところに、ケータイがピコン、と通知音を響かせた。
画面に表示された名前は、タイミングが良いのか悪いのか。
“砂川 駿”
どくんっ、と私の心臓は大袈裟に反応する。
既読はすぐにつけないほうがいいとか、返信は遅らせたほうがいいとか、よく雑誌のコラムで見かけるけれど。
そんな駆け引き、私にはできないみたいだ。
メッセージアプリをすぐに起動させて、タップして届いたメッセージを開いた。
[砂川駿です、よろしく]
連絡先を交換したあと最初のお決まりの、名前付きの軽い挨拶。
[今日はありがとう、お疲れさま]
それに付け加え、いかにも砂川くんらしいシンプルなメッセージが届いていた。