素直になれない、金曜日
.
.


────ピーンポーン




住宅地の真ん中あたりにある、クリーム色の壁の小綺麗な一軒家。


方向音痴がゆえに心配だったけれど、表札には “砂川” とあるし、ここで間違いないだろう。



インターホンを鳴らすと、少しの間があって鍵がガチャリと開く音がした。




「ありがと、来てくれて」




ドアが開いて、顔を覗かせたのは砂川くんで。




「あの、要るかなって思って、いろいろ買ってきたんだけど……。薬はあるって言ってたからそれ以外」





手に下げていたビニール袋を軽く持ち上げる。


実は、ここに来る途中スーパーに寄ってきたんだ。


ご両親は家にいないって言ってたし、いろいろ足りないんじゃないかなって思って。



袋の中には、スポーツドリンクに冷却シート、りんごなんかの食べやすそうなフルーツに、それから砂川くんは甘いものが好きだと思ったからゼリーも。



ゼリーは葵依ちゃんの分も買ってある。



「まじで?」



袋の中身をちょっと覗いて、目を見開いた砂川くん。



「桜庭さんってほんと……」



なにかを言いかけて、途中で口を噤む。



< 177 / 311 >

この作品をシェア

pagetop