素直になれない、金曜日



きらきら、ちかちか。

瞬間、星屑が散った。




───ように見えたのは、たぶん気のせい。


だけど、胸を打つどきどきはどんどん加速している。




目の前の彼は、私をまっすぐに見つめながら、わらっている。



この人が笑うところをはじめて見た。

だって、さっきまでずっと仏頂面だったから。




くしゃあって目が細くなって、きゅっと口角があがって、白い歯がちらりと覗く。



なんて、すてきな笑顔なんだろう。

先ほどまでの様子からは想像できないほどの柔らかい笑顔に目が釘付けになった。





『あんた、優しいんだな』



たった一言、されど一言。
舞い上がるには十分すぎる。



“優しい” って。

私のこと、だよね。



人生で、男の子にそんなふうに言われたのは初めてで戸惑いを隠せない。

それに、“優しい” なんて、そう言ってもらえるようなことを私は何もしていない。


優しさに触れたのは、むしろ、私の方なのに。




「じゃあ、また」




目の前に散った星屑に見惚れている間に、彼は葵依ちゃんを連れて背中を向けて、気づいた頃にはもういなかった。



一方の私はというと、呆然としたまましばらくその場から動けなくて。




痺れを切らせた小春に、


「ねーたん!いつまでぼーっとしてるの!」


と小突かれて、ようやく我に返ったのだった。



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