素直になれない、金曜日
『ならいいけど。全然おまえ帰ってこねーから、叔母さん心配してた』
そういえば、お母さんになにも連絡してなかった。
いつもなら、もうとっくに帰っている時間だから、心配するのもあたりまえだ。
お母さんに、心の中でごめんね、と謝る。
『……で、いつまでそこにいるつもり?』
「ええっと、もうすぐ帰るよ」
『そ。あんまり遅くならないうちに帰れよ』
「わかってる……!恭ちゃんは私のこと子供扱いしすぎなの!」
むう、とむくれながらそう言うと、電話の向こうからははっ、と笑い声が聞こえた。
恭ちゃんの可笑しそうに笑っている姿が容易に想像できてちょっと癪だ。
『くれぐれも帰り道は気をつけろよ』
「うん」
『じゃあ切るぞ』
「うん、またね」
ぷつ、と電話が途切れる。
恭ちゃんとの電話はいつもこんな感じだ。
電話を終えると、砂川くんはベッドの上に戻っていた。
「……深見先輩、なんて?」
その口調が少し素っ気なく聞こえたのは気のせいだろうか。
深くは考えないでおこうと、とりあえず砂川くんの問いに答える。
「早く帰ってこいって……だから私、そろそろ、」