素直になれない、金曜日
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ふわ、と欠伸をひとつ。

ゆっくりと瞼を上げるとそこには砂川くんがいた。



「……あ、桜庭さん起きた?」

「え……?あ、えっと」




寝ぼけた頭でゆっくりと状況を理解する。



砂川くんが眠りについたところまでは記憶がある。ということは、それから少しして私もつられて眠ってしまったみたいだ。


いつのまにか、繋いでいた手は離れていた。




「ごめん、私すっかり寝てしまって……。砂川くんは、いつから起きてたの?」


「結構前から」




くっと口角を上げた砂川くんに、起こしてくれてもよかったのに、と思っていると。



「あんまり気持ちよさそうに寝てるから起こすのも悪いかなって」



気持ちよさそうにって……!

変な顔とかしてなかったよね? 寝言とか、聞かれてしまっていたらどうしよう。


今更ながら、寝落ちてしまったことを後悔する。



「ていうか、さっき下行ったら、葵依が寝ててびっくりした。寝かせてくれたんだ?」




こく、と頷いた。

ご飯を一緒に食べたあと、葵依ちゃんが眠そうに目をとろんとさせていたから。



いつも寝ているという部屋に葵依ちゃんを連れて行って、葵依ちゃんが眠りにつくまでおとぎ話を読み聞かせていた。


いつも、小春を寝かせるときにそうしているから。


何度も読み聞かせたおとぎ話は、もう絵本がなくても聞かせられるくらい憶えていた。




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