素直になれない、金曜日
自然に早くなってしまう歩調、その足で向かった先は図書室。
扉を開ければ、既に図書室の中にいた皆の視線が私に集中した。
「あの、お久しぶりです」
みんなの視線に気恥ずかしくなって、小さな声でそう言うと。
「えっ、ひよりちゃん?」
「は、はい」
私の名前を呼んだ先輩に返事すると、彼女はみるみる目を見開いて。
「ひよりちゃんがポニーテールなんて珍しいね!似合う!かわいい!」
「桜庭ちゃん、髪上げてても似合うんだね」
「うん、その髪型すげえ好み!」
いつものハーフアップではなく、ポニーテールに纏めた髪型を口々に褒められる。
そういえば、高校に入学してから、髪を全部上げたのは初めてかもしれない。
まさか、こんなに褒めてもらえるとは思っていなかったから、たとえお世辞でも嬉しくて。
嬉しいのと、照れくさいのとで、照れ笑いを浮かべていると。
「ひよりのポニーテールなんて新鮮」
「ひゃっ、……恭ちゃん?」
扉が開いて、次に入ってきたのは恭ちゃん。
後ろから私に近づいてきたかと思えば、くるくると私の毛先を指先に巻き付けて、早速遊んでいる。