素直になれない、金曜日
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文化祭に向けての細かいスケジュールを立てたところで委員会が終わり、荷物をまとめながら、ふと思い立つ。



このまま図書室に残って残りの課題をしようかな。

我ながらいいことを思いついた。



実は、まだ数学の課題でわからない問題が幾つか残っていて。
どうせ、家に帰っても集中できないだろうし、それなら静かで空調もばっちりの図書室に残って勉強したほうが捗るかもしれない。



よし、そうしよう。


そうと決まったら、と片付けようとしていた荷物の中からノートと数学の問題集、ペンケースを取り出してもう一度席に着く。


それから、図書室を出て帰っていく皆を見送っていたのだけれど。


扉から出て行かずに、すとん、と隣に腰を下ろした影がひとつ。


驚いて振り向くと、それは。




「砂川くん? どうして……」

「俺もちょうど勉強しようと思ってた」



砂川が軽く持ち上げて見せたそれは、私がさっき鞄から出したのと同じ問題集。




「隣、いい?」




緩く首を傾げた砂川くんに、こくり、と頷いた。

頷く以外の選択肢は、私には最初から用意されていない。


そのまま問題集を開こうとした砂川くんに声をかける。



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