素直になれない、金曜日
「あの、砂川くん」
「ん?」
砂川くんがいない毎日はつまらなかった、だとか、会いたかった、だとか。
本当の気持ちを伝えても、きっと、重すぎて受け取ってもらえない。
その一瞬ののちに、頭のなかでぐるぐると考えて。
「久しぶり、だね」
結局口から零れたのは、ありきたりな言葉だった。
「うん」
砂川くんは少し目を細めて頷いて。
また視線を問題集に戻してしまう。
それが寂しくて、自然と口が開いた。
「砂川くんは、夏休みどうだった?」
「どうって……、ふつう、だったよ」
ちら、と私の方を見て────それも、束ねたポニーテールの方を。
そして、また目を伏せたから。
うっ、ポニーテール、そんなにだめかなあ。
でも『いつものほうがいい』と言ったきり、砂川くんは何も言わないし、そういうことなのかな。
せっかく小春とおそろいだけど、砂川くんと久しぶりに会えたのにこんなの勿体ない。
「あの、やっぱりポニーテールほどくね」
髪型を戻せばいつも通りに話せるだろうか、とポニーテールの結び目に手をかけた、その瞬間。
「待って、ごめん、違う」