素直になれない、金曜日
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「砂川くん……?」



昇降口に辿り着くと、なぜか砂川くんが靴箱にもたれるようにして立っていて。

驚いて名前を呼ぶと。




「俺も着いてくよ、買い出し」

「えっ……?」


「ひとりじゃ、何かあったとき大変でしょ」




さも当たり前、という風に言われて面食らう。

砂川くんが優しいのは、十分知っているけれど、ここまで気にかけてくれるとまでは思っていなかったから。




「砂川くん、作業は?」




素直にありがとうって言えばいいのに、捻くれてこじらせている私は、そんなことを聞いてしまう。




「俺の作業は殆どないようなものだから」



砂川くんは、ふっ、と笑って肩を竦めた。

……たしかに、そうだった。



砂川くんはメニュー担当だったんだけれど、夏休み中にレシピは全部考えてきてくれて。


自分の作業が終わった砂川くんは、今は毎日、皆の作業のお手伝いをしている。




「俺と一緒じゃ嫌?」



首を傾げた砂川くんに、そんなことないよ、と首を横に振った。

むしろ、嬉しいサプライズだ。



また、砂川くんとふたりで買い出しに行けるなんて。


自然と緩んでしまう頬をなんとか抑えながら、一足先に昇降口を出た砂川くんの後を追った。





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