素直になれない、金曜日
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ホームセンターに向かうということは、N高校に近づくことになる。


N高校に近づくにつれて、すれ違う下校中のN高生の人数が増えてきて。

それは、ちょうど下校時刻だからあたりまえのことなんだけど。



N高校は工業系の高校で、男子生徒が多いことで有名なんだ。

私は人見知りを発動させて、たくさんのN高生とすれ違う度に萎縮しそうになっていた。




「あの女の子可愛くない?あの制服……近くの高校のだよな」

「細いし髪さらっさら、あんな子彼女にしたいわー」

「俺、声かけてこよっかな」

「やめとけよ、隣にいる男、彼氏かもしんねえぞ」

「でもそれにしては、距離遠くない?」



すれ違うN高生がこちらをちらちら見て、なにか囁いている気がする。


内容までは聞き取れないし、気のせいかもしれないけれど。


肩身が狭くて、身を縮こませていると。



「桜庭さん、こっち」

「っ……!」



耳元で、砂川くんが囁いて。

驚いて顔を上げると、彼は少し強引に私の左の手のひらをとった。


指と指の間に、砂川くんの指がするりと差し込まれる。



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