素直になれない、金曜日
「遅いじゃん、心配した」
私の姿を瞳に捉えて、ほっとしたように微笑んだのは恭ちゃんで。
「恭ちゃん……!」
その名前を呼んで、そのまま駆け寄ろうとする。
それが、恭ちゃんと私のいつも通りだったから。
だけど、今日はそうはいかなかった。
「っ?」
駆け出そうとした私の右腕を、誰かがぐっと掴んでその場に引き留めたから。
誰か、じゃなくて─────そんなの、この場には砂川くんしかいない。
驚いて振り向くと、砂川くんの真剣な瞳が真っ直ぐこちらを向いていた。
「砂川、くん?」
かろうじて名前を呼ぶと、砂川くんの瞳がぐらりと危うく揺れたような気がした。
いつもとどこか違う砂川くんの様子に、私は黙っていることしかできなくて。
永遠のように感じた一瞬の沈黙ののち、砂川くんがゆっくりと口を開いた。
「なあ」
「……っ」
ぐっ、と体を引き寄せられて。
切なげに歪んだ瞳が追い詰めるように迫ってくる。
「深見先輩と桜庭さんって、何なわけ?」
「え……っ?」
感情を押し殺したような苦しげな声で、告げられた言葉に私の頭の中ははてなでいっぱいになる。
何って、そんなの。
私と恭ちゃんは従兄妹だよ。
普通の従兄妹に比べると、仲は良いかもしれない。でも。