素直になれない、金曜日
「そうなんだよな。定番はおとぎ話のパロディなんだろうけど……それだとありきたりすぎるっつうか」
「他のクラスと被る可能性も高いしな」
「たしかに」
話し合いはなかなか前に進まない。
どうしたものか、とクラス全員が考え込む事態になってしまった。
んん……劇、かあ。
何かいい案はないかな。
……あ。
ぱっ、と一つのアイデアが脳裏に浮かんだ。
万人受けするかはわからないけど、アレンジ次第では面白くなるかもしれない。
いいアイデアが閃いた!と、俯いていた顔をあげると、周りは近くの席の友達同士で相談したりしていて。
とても発言できるような空気ではない。
挙げかけた手をそっと降ろして、机の下に隠した。俯いて、唇を柔く噛む。
いつだって私は黙って下を向いていることしかできない。
誰かの言ったことに頷くことしかできない。
まるで透明人間。
ずっと私はそんな私が大嫌いで───。
……ううん、違う。