素直になれない、金曜日
思ったよりも皆の反応が良くて、驚きを隠せずに目を見開いていると。
「時代劇かあ〜。桜庭さん、町娘とか似合いそうじゃない?雰囲気かわいいし!」
「絶対似合うよ!」
そんなことを言ってくれる女の子まで現れた。
でも、町娘役は私には荷が重すぎるというか。
それに。
「私は、出演するなら女忍者かな……」
町娘役は、それこそ華やかで可愛い、榎木さんが適任だろうと思ってそう言うと。
「あははっ、まさかそこで忍者役希望してくるとは思わなかった!桜庭さんって面白いんだね」
「いつも大人しいから、もっと近寄り難い子なのかと思ってたけど、全然そんなことないじゃん!」
あっという間にクラスの皆に取り囲まれる。
わあわあと賑やかな輪の中心で、戸惑いつつも微笑んでいると。
「じゃあ、うちのクラスの出し物は時代劇でいい?」
実行委員長がクラスの皆にそう問いかけて、
次の瞬間にはぱちぱちぱち、と盛大な拍手が起こった。
その拍手の音に包まれて、思わず目頭が熱くなる。
じわりと滲みかけた涙は、笑ってごまかした。
────それはたしかに、私が前に踏み出した確かな一歩だった。