素直になれない、金曜日
「恭ちゃんっ、あのね!」
「うわっ、なんだよ」
私のあまりのテンションの高さに、眉を顰めつつ、私に促されるままに中庭のベンチに腰かけた恭ちゃん。
そして、私もその隣に座った。
「なんか、いいことでもあった?」
恭ちゃんが首を傾げて。
それに答えるべく、私は一限目のHRでの話をした。
最初から最後まで、話し終えて。
自然と緩んだ頬を戻そうともせずに恭ちゃんを見上げると、恭ちゃんは、ふは、と柔らかく微笑んで。
「よかったな」
そう言って、腕が伸びてきて。
くしゃくしゃと、頭を撫でてくれた。
かと思えば、みょーん、と頬を左右につまんで引っ張られて。
「いひゃい……!なにひゅんの……っ!」
首を横に降って抵抗するも、恭ちゃんは楽しそうに笑うだけで。
「はは、変な顔」
あまりにも馬鹿にしたように笑うから、むっとする。
口を尖らせた私の表情に、恭ちゃんはもう一度、くっ、と笑って。それから。
「頑張ったな」
とびきり優しく微笑んだ。
「……うん、頑張れたよ」
それから、ふと自分がまだ昼ごはんを食べていなかったことを思い出して、ばっと立ちあがると、恭ちゃんが驚いた様子でびくっと反応した。
「いきなり、なに」
「じゃあ、私教室戻るね……!」
その場に恭ちゃんを置いて教室へ足早に向かった。
早くしないと、昼休みが終わってしまう。
────背後から、恭ちゃんの呆れたため息が聞こえたような気がした。