素直になれない、金曜日
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教室に戻ると、何故か数人の女の子に周りを取り囲まれた。



「桜庭さんって、もしかして深見先輩と付き合ってるの?」

「え……?恭ちゃん、と?」



そんなことあるはずないのに。
どうしていきなりそんなことを……と戸惑っていると、その女の子が付け加える。




「教室から、中庭に桜庭さんと深見先輩が一緒にいるのが見えてね?」




たしかに、この教室の窓からは中庭を見下ろすことができる。


だけど一緒にいただけで、付き合ってるだなんてそれは決めつけなんじゃ……と思っていると。





「それで、桜庭さんと深見先輩がすっごく仲良さそう……っていうか、いちゃいちゃしてるように見えたんだけど……」



「いちゃいちゃっ!? それはないよ……っ!」




思わず、声を張り上げた。

たしかに、恭ちゃんとは仲が良いと思う。恋愛とは一切関係のないベクトルで、大切で特別な人だ。


だけど、いちゃいちゃ……!?

それはない。絶対ない。天地がひっくり返ったとしても、ない。


ありえない疑惑に、心臓が止まりそうになった。誤解も甚だしいところだ。





「恭ちゃんと私は、従兄妹なの。だから、仲は良いけど、決してそういうのじゃないよ……!」




身振り手振りを交えながら必死に訴えると、その子はあっさりと私の言い分を信じてくれた。




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