素直になれない、金曜日
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放課後。

妙にそわそわしながら、図書室に向かう。


今日は朝からいろんなことがあったなあ、なんて感慨に耽りながら図書室の扉を開けて。


けれど、まだ砂川くんはいなかった。


いつものように貸出カウンターのところに座って、手持ち無沙汰に周りのものを整頓したりしながら、砂川くんが来るのを待つ。



はやく来ないかなあ。




「……!」




はやる気持ちをなんとか落ち着けていると、ガラガラッと音がして扉がひらいた。


ぱっ、と扉の方を振り向くと、期待通りの人物がそこにいて。



「砂川くん!」



緩みきった表情を惜しげもなく晒して、その名前を呼んだ。



いつもならそこで、『今日は先来てたんだ』とか、なにか一言でも返してくれるはずなのに。



「ああ…………うん」




素っ気ない返事に、違和感を覚えた。

そのまま何も言わずに作業を始めた砂川くんに倣って、私も手を動かしはじめたけれど。



先ほど感じた違和感が拭えなくて。



ちらりと砂川くんの横顔を見上げることを何度も繰り返したけれど、その表情には何の感情もうつっていなかった。




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