素直になれない、金曜日
そのまま少しも会話を交わさないまま、静まりかえった図書室に最終下校のチャイムが鳴り響く。
窓から差し込む茜色のひかりが、鮮やかで眩しくて、なんだか息が苦しくなった。
春頃から、これまで毎週火曜日の昼休みと金曜日の放課後、欠かさずずっとふたりで図書当番をしてきたけれど、ここまで静かなのははじめてだった。
こちらを振り向きもしないで、荷物を片しはじめた砂川くんに、何の根拠もなかったけれど、どくん、といやな胸騒ぎがして。
砂川くん、どうしたんだろう。
なにか、あったんだろうか。
昨日まではいつもと同じだったのに。
「待って、砂川くん……っ」
荷物をまとめて、ひとりでさっさと図書室を出て行こうとする砂川くんの後ろ姿にいてもたってもいられなくて、思わず引き留めた。
「……」
砂川くんは、何も答えない。
だけど足だけはその場にとめてくれた。
「あの……砂川くん、どうしたの?」
その後ろ姿にそっと問いかける。
それでもやっぱり、彼は口を開かなかった。