素直になれない、金曜日
「なにか、あった?私でもよかったら話────」
話、きくよ。
そう言い終える前に、砂川くんがこちらを振り向いた。
今日、はじめてちゃんと目が合った。
いつも何を見るにも真っ直ぐなその瞳が、今日はほの暗い光を宿しているように見える。
「……いいよ、そんなの、しなくて」
「っ、」
砂川くんの声が、震えているように聞こえたのは果たして気のせいだろうか。
わからない、けれど。
「……悪いけど、俺」
すっと砂川くんが私から視線を逸らす。
「桜庭さんのこと理解できない」
それだけ言い残して、砂川くんは私を図書室に一人残して足早に去って行った。
逸らされた視線、いつもより幾分も冷気を纏った声色、それから。
『理解できない』
私、砂川くんにはじめて、
─────拒絶、された────?
すぐには状況が飲み込めなくて、頭で理解しても、ショックがあまりに大きくて。
しばらく、たったひとり、図書室で呆然と立ち尽くしていた。