素直になれない、金曜日
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誰もいなくなった教室で
ひとり、鞄の中の教科書を整理していた。



置き勉しているクラスメイトも多いけれど、私は毎日持って帰らないと落ち着かない。



その日使った教材をすべて詰め込んだ私の鞄は、数分前の終業のチャイムと同時に教室を飛び出して行ったクラスメイトの誰よりも重い自信がある。





夕暮れのオレンジを反射している教室の掛け時計をちらりと確認すれば、委員会がはじまるまで、まだ15分もあった。




「……図書室だったら、5分前にここを出ればいいよね」




この学校は新校舎と旧校舎から成っていて、図書室は旧校舎の1階にある。


私の教室は旧校舎2階に位置していて、図書室までさほど距離はない。



5分前にここを出るのが妥当というところ。






─────あと10分もあるけれど、することも特にない。




提出課題をするには時間が足りないし、
ひとりきりのこの教室には話し相手もいない。





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