素直になれない、金曜日
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「なんだよ、しけた面しやがって」




あれから数日後の帰り道。
私の隣を歩いているのは恭ちゃんだ。



────あれ以来、砂川くんとまともに口を利いていない。

あの日の昼休みに送ったメッセージも、既読がついたきり、返信は来なかった。



文化祭の準備で毎日顔を合わせるのに、近づけばするりと交わされ、話しかけるチャンスさえもらえないまま数日が過ぎていた。


いつのまにかあたりまえになっていた、ふたりでの下校もあの日以来ぱたりと途絶えている。


あからさまに無視……というか、避けられているのは明らか。


気落ちしている私を慰めるかのように、ここ数日は恭ちゃんが一緒に帰ってくれている。




『砂川と喧嘩でもした?』




砂川くんが図書室を飛び出して行った日、ひとりでとぼとぼと歩いて帰る私を目ざとく見つけて、恭ちゃんが駆け寄ってきて。



半泣きになりながら、図書室での砂川くんとの会話を恭ちゃんに伝えると。



『あー……』




と恭ちゃんは、どこか納得した様子だった。



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