素直になれない、金曜日
『なかなか拗らせてるなあ』
はは、と可笑しそうに笑った恭ちゃんは、ぺろっと舌を出して。
『まあ、半分くらい俺のせいかもしれないけどね』
涙目の私をよそに、何故か楽しげだった。
他人事みたいに笑う恭ちゃんにむっとして、恭ちゃんの脇腹を抓ると。
『うわ、それは反則だって!地味痛えから!』
『恭ちゃんが悪いんだもん』
私は真剣に悩んでいるのに、他人事みたいな顔して笑っているからだよ。
ぷいっ、と顔を背けると。
頭の上から柔らかい声が降ってきた。
『おまえらは遠回りしてるだけで、たぶん大丈夫だよ』
『え……?』
恭ちゃんが急に、柔らかく、でも重みのある声で。
『俺からは答え合わせはできないし、何も答えはひとつじゃないと思うけど。今のひよりなら、』
きっと幸せになれるよ。
幸せになれる、の根拠なんてどこにあるというのだろう。無責任だ、って普通なら思ってしまう。
だけど、それを言ったのが恭ちゃんだから。
いつだって私の事を大切に見守ってきてくれた恭ちゃん。上のきょうだいがいない私は、いつも彼の背中を追いかけて育ってきた。
ひとりじゃ何一つ自信を持ってできなかった私は、昔からしっかりしていた彼に憧れていた。
そんな恭ちゃんの言葉だから、信じられるような気がしたの。
『だから、もう少し頑張れ』
『……うん』