素直になれない、金曜日
「え……? でも、そんな、いきなり」
「いいから、由良って呼んで!こっちも、ひよって呼ぶから」
ご、強引だ。
しかも、“ひよ” と呼ばれ慣れないニックネームを突然与えられる。
有無を言わせない勢いの榎木さんに面食らいながらも、従うことにした。
「由良……ちゃん?」
いきなり呼び捨てはハードルが高くて、なんとかそう呼ぶと、榎木さんは少し表情を和らげたように見えた。
「ひよに謝っておきたいことがあるの」
「私に……?」
そう、と榎木さんは頷いて。
私の瞳を真っ直ぐに見据えた。
「いろいろ、意地悪してごめん」
「……っ?」
いじ……わる? 何のことかぴんとこなくて、きょとんとすると。
「仕事押し付けたり、掃除任せっきりにしたり、あれ全部わざとだった」
「……」
思わず黙り込んだけれど、榎木さんは怯まずに言葉を続けた。
「正直言うとね、私はひよみたいな子が一番苦手だった」
苦手っていうより、むしろ嫌い、かもね。
自嘲ぎみに笑った榎木さんが少し目を伏せる。