素直になれない、金曜日
はやく返してしまいたいのに。
だって、このハンカチを見るたびにあの人のことを思い出してしまう。
その度に、胸がきゅうってして
なんだかおかしな気持ちになるんだから。
───あの人は、いったい何処でなにをしているんだろう。
どんな毎日を過ごしているんだろう。
考えても埒が明かないことをぼんやりと考えているうちに、時計の針は60度進んでいて。
「もう行かなきゃ」
ガタン、と音を立てて席を立つ。
それ以外の音がしない教室は、ひどく虚しかった。