素直になれない、金曜日


はやく返してしまいたいのに。

だって、このハンカチを見るたびにあの人のことを思い出してしまう。



その度に、胸がきゅうってして
なんだかおかしな気持ちになるんだから。





───あの人は、いったい何処でなにをしているんだろう。

どんな毎日を過ごしているんだろう。





考えても埒が明かないことをぼんやりと考えているうちに、時計の針は60度進んでいて。





「もう行かなきゃ」





ガタン、と音を立てて席を立つ。

それ以外の音がしない教室は、ひどく虚しかった。





< 26 / 311 >

この作品をシェア

pagetop