素直になれない、金曜日


「中学のとき、砂川に告白したことある」

「っ?!」

「まあ、あっさり振られたけど」



なんでもないように、あっさりと言ってのけた由良ちゃんだけど、私はそれどころではない。


由良ちゃんが、砂川くんに告白……?
振られた?

それって、由良ちゃんって砂川くんのことが好きだったってこと?




情報量が多すぎて、頭が混乱している。


訳がわからない、といった表情を浮かべる私に気づいて由良ちゃんが軽く説明を加えた。




「たぶん、今のひよみたいな本気の恋してたかっていうと違うんだろうけど。イジメに遭ってたって言ったじゃん?

周りの皆はイジメが始まったら手のひら返したみたいに、私を遠ざけたんだけど、砂川だけはイジメの前も後もなんにも変わらなかったんだよね。

そういうとこが好き……っていうか、いいなって思ったんだよね」




由良ちゃんが聞かせてくれた話は、すごく砂川くんっぽくて思わず笑いそうになった。


ほんと、変わらないんだなあ。




「あ、今はもう違うから。気にしないでよ」




由良ちゃんが慌てて弁解するけど、別に気にしているわけじゃないから心配は無用だ。



まあ……たしかに、由良ちゃんが砂川くんのことが今でも好きって言ったとしたら、多少複雑な気持ちにはなるかもしれない、けれど。




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