素直になれない、金曜日

「まあ、そんなこんなあって、私はひよと砂川が出逢う前から砂川のこと見てきたんだけどさ」



一呼吸おいて、由良ちゃんは私をじっと見る。



「ひよは自信持っていいと思う」


「……」



どうして、と私が尋ねる前に由良ちゃんは再度口を開いた。



「ひよも砂川に出逢って、いろいろ変わったかもしれないけど。私は、砂川もひよに出逢ってから変わった気がするのよね」



「……砂川くん、が?」



「砂川が『無口の王子様』って一部で囁かれてるのは知ってると思うけど、砂川ってほんとに女の子と喋らないんだ。だって私、中学のとき見たことなかったもの。女の子と並んで歩いたり、笑いながら喋ったりしてるとこなんて」



ふ、と由良ちゃんが口元を緩めて。



「だから、ひよと砂川が話してるとこはじめて見たときほんとにびっくりしたんだから。砂川があんなに喋ってて、しかもあんなに柔らかい笑みを浮かべてるとこなんて初めて見た。

砂川は誰にでも優しいけど、あんな風に誰にでも気を許すようなやつじゃないよ。私が知ってる限りはね。


たぶん、砂川にとって、ひよは特別だよ。


だから、避けられてるのには、“嫌われてる” 以外の何か違う理由があるんじゃないの?って、私は思うんだよね。……ひよは、砂川とちゃんと向き合うべきだよ」





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