素直になれない、金曜日
「うん……。でも、」
「でも?」
由良ちゃんの言っていることはわかる。
砂川くんの考えていることは、まだなにもわからない。ちゃんとしたことは、砂川くんに直接聞かなければわからない。
だけど。
「怖くて。やっぱり自信もなくて……」
そんな私の小さな声を聞いた由良ちゃんが、教室の前の時計をちらりと見上げて。
「まだ昼休み少し残ってる。よし、ひよ、こっち来て」
「えっ?」
突然立ち上がらされて呆然とする私を由良ちゃんが手招きした。
「いいから、来て!」
言われるがままに教室を出て、辿り着いたのは女子トイレ。
大きな鏡の前に立つことを促され、それに従うと、由良ちゃんはコンセントにカチャ、となにかを差し込んだ。
見れば、それはハンディサイズのヘアアイロン。
「目、閉じてて」
由良ちゃんの命令に従って瞼を伏せると、髪の束が持ち上げられたのが感触で伝わってきた。
それが数回繰り返されたと思ったら、次は顔。
肌を、柔らかい何かで何回も撫でられて、それから瞼、頬、そして唇にさらさらと何かが重ねられていく。