素直になれない、金曜日
そんなことが数分の間繰り返し行われて。
まるであやつり人形にでもなったような心地がした。
「はい、目、開けていいよ」
その由良ちゃんの声を合図に瞼を上げると、向き合った鏡の中にいたのは、別人。
ううん、それはたしかに私のはずなんだけれど……。
くるんと巻かれた毛先に、ぱっちりと上がった睫毛、上気したような頬に、うるうるの唇。
「……魔法?」
「ヘアアレとメイクだから!」
うわ言のように呟いた私に、鋭くツッコミを入れたのは由良ちゃんで。
いや……わかっているけれど。
私だって、ヘアアイロンもメイク道具も持っているし、たまには使ったりするから。
でも、上手いひとがするとこんなにも違うものなのか、と驚いてしまった。
「どう?可愛いでしょ?」
そこで可愛いと自分でいうのは、おかしいけれど。でも、いつもよりはずっと。
こくり、と頷くと由良ちゃんは得意気にふふん、と笑った。
「ひよは、なんで女の子はオシャレすると思う?」
「え……なんでって……」
改めて聞かれると、すっと答えが出てこない。そういえば、どうしてなんだろう。