素直になれない、金曜日

そんなことが数分の間繰り返し行われて。

まるであやつり人形にでもなったような心地がした。




「はい、目、開けていいよ」



その由良ちゃんの声を合図に瞼を上げると、向き合った鏡の中にいたのは、別人。

ううん、それはたしかに私のはずなんだけれど……。



くるんと巻かれた毛先に、ぱっちりと上がった睫毛、上気したような頬に、うるうるの唇。




「……魔法?」


「ヘアアレとメイクだから!」




うわ言のように呟いた私に、鋭くツッコミを入れたのは由良ちゃんで。


いや……わかっているけれど。

私だって、ヘアアイロンもメイク道具も持っているし、たまには使ったりするから。


でも、上手いひとがするとこんなにも違うものなのか、と驚いてしまった。




「どう?可愛いでしょ?」




そこで可愛いと自分でいうのは、おかしいけれど。でも、いつもよりはずっと。

こくり、と頷くと由良ちゃんは得意気にふふん、と笑った。




「ひよは、なんで女の子はオシャレすると思う?」


「え……なんでって……」




改めて聞かれると、すっと答えが出てこない。そういえば、どうしてなんだろう。




< 265 / 311 >

この作品をシェア

pagetop