素直になれない、金曜日
階段を下りて、左に曲がってまっすぐ行けばその突き当りが図書室だ。
奥に見える図書室の扉は、いつもは出入りするとき以外は閉ざされているのに、今は “ここですよ” と言わんばかりに開け放たれている。
そこに吸いこまれるようにして入る。
───いや、入ろうとしたとき。
「っ!」
ゴツ、と鈍い音を立てて、なにかに頭をぶつけた。
「……痛」
私の気持ちを代弁するような声が聞こえて、はっと気づく。
頭をぶつけた “なにか” って、もしかして人……っ?
それなら早く謝らないと、とその声の持ち主を振り返った。
「あのっ、すみませ─────」
意図せず言葉が宙ぶらりんに途切れる。
うそ、どうして、こんなところで。
次から次へと頭の中に湧き上がってくる言葉。
だけどほんとうは今そんなことはどうでもよくて。