素直になれない、金曜日

「まあ、楽しんでおいで」

「うんっ!」

「もし泣かされたら、胸くらいは貸してあげるわよ」



ふふん、とニヒルに笑う由良ちゃん。

心強い味方だなあ。



「行ってらっしゃい」



由良ちゃんに見送られて、講堂の外に出ると。


「桜庭さん、こっち」

「砂川くん……!お待たせしましたっ」



外の壁に沿って立っていた砂川くんが私に気づいて、手招きした。

慌ててそちらに駆け寄る。



お待たせしました、と言えば砂川くんは首を横に振って。




「劇、よかった。面白かったよ」

「み、見てたの……っ?」




驚いた私に、砂川くんは頷いた。

あの忍者の格好を見られたと思うと、恥ずかしさで声も出なくなる。

そんな私に追い討ちをかけるように砂川くんは口を開いた。




「桜庭さんの忍者、すげえ面白かった」



くすくす、と肩を震わせながら思い出し笑いする砂川くん。

お、思いっきり笑われている……。


複雑な気持ちを持て余していると。




「────うそ。桜庭さんが、いちばん可愛かった」




ふ、と口角を上げて私を見据えた。


ず……るい。わざとなのか、天然なのか、もうどっちだっていいけれど、そんなのずるいよ。



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