素直になれない、金曜日

心臓がばくばくしておかしくなりそう。

そんな私を置き去りにして、砂川くんはあっさりと話を変える。




「どっか見たいとことか、食べたいものとかある?」

「ええっと……特に考えてないかな。あ、でも、たこ焼きは食べたいかも」



「たこ焼き、俺も好き。……じゃあ、適当にまわろっか」



砂川くんの言葉に、うん、と頷くと。



「はい」


突然差し出された手のひら。

何を求められているのかわかりかねて、首を傾げていると。



「手。……はぐれたら、困る」




いたずらっぽく笑って、ん、と手のひらを再度差し出されて。

跪いてはいないものの、その姿はさながら王子様。




今だけは、砂川くんのお姫さまになりたいと思っても、許されるだろうか。

シンデレラみたいに、期限付きでも構わないから。



私はゆっくりと、その手のひらの上に自分の手を重ねた。






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