素直になれない、金曜日
「それと、あのね、もう一つ。砂川くんに聞いてほしいことがあるの」
緊張でどきどきする。
どきどきどころか、ばくばくしている。
それでも、もう後戻りはできない。
後戻りなんてしない、そう決めたから。
「砂川くんと一緒に図書当番したり、文化祭の準備をしたり、喋ったり、一緒に帰ったり、毎日一緒に過ごしていくなかで、砂川くんのいいところをいっぱい知って。
そんな砂川くんと過ごす毎日は、私にとって特別で、大切なものになったの」
この想いを伝えることで、そのきらきらした日常がもう二度と手に入らなくなるかもしれない。
だけど、もうごまかしてばかりいるのはやめる。
────だって私は、砂川くんの心まで欲しいと思ってしまったから。
そう思うのなら、私もちゃんとありのままの心を差し出さないと。
「砂川くんと、出逢えてよかった。
あの日、助けてくれたのが砂川くんで、一緒に図書委員になったのが砂川くんで、ほんとうによかった」
砂川くんに出逢わなければ、今の私はずっと違ったものになっていただろう。
だって、今の私から砂川くんの存在を奪えば、もう何も残らないような気さえする。