素直になれない、金曜日



「今の、ほんと?」



掠れて低くなった砂川くんの声が耳に入ってくる。

今の、って? と首を傾げた私に。




「俺のこと、好きだって」

「っ!」




面と向かって本人に言われるとものすごく恥ずかしい。

恥ずかしいけれど、こくり、と首を縦に振った。だって紛れもなく事実だ。



すると、掴まれた腕をぐいっと引かれてあっという間に砂川くんの腕の中に閉じ込められる。




「俺も」

「っ、え?」

「……俺も、桜庭さんのこと、ずっと好きだったよ」





爽やかなシトラスの香りに包まれて、頭がくらくらして。聞こえた言葉が空耳なんじゃないかと思った。


驚いて顔をあげると、今までのどのときよりも蕩けた表情でこちらを見ている砂川くんがいて。


思わず、じっと見つめると、それに気づいた砂川くんが。




「あ─────もう、好きすぎて困ってるんだよ」



苦笑ぎみに零した砂川くんの台詞に、ようやく先ほどのが空耳じゃないことが判明した。




「……っでも、最近まで明らかに私のこと避けてた、よね?」




そう簡単には信じられなくて、疑問をぶつければ。




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