素直になれない、金曜日
「あー……、あれは」
砂川くんは、ばつが悪そうに眉を顰めた。
「……てっきり、桜庭さんは深見先輩のことが好きだと思ってたんだよ」
「え……?」
「だから、ふたりの仲良さそうなところを見て柄にもなく妬いて、どうしたらいいかわかんなくなって。……離れた方がいいって思った。桜庭さんが幸せなら邪魔しないほうがいいかなって」
「……」
「俺、桜庭さんのことになると冷静になれないし、余裕もないし。おまけに、誰かのこと好きになったのなんて桜庭さんが初めてだから、器用に立ち回ることもできなくて」
結果的に、傷つけて……ごめん。
申し訳なさそうに謝る砂川くんに、大丈夫だよ、と首を横に振った。
「恭ちゃんは、従兄なんだよ」と言うと、砂川くんは初耳だといった様子で驚いていた。
そういえば、言う機会がなかったんだっけ。恭ちゃんが私の従兄だってこと。
「つーか、桜庭さんに先に告わせるなんて、俺ほんとかっこ悪……」
肩を落とした砂川くん。
そんなこと、気にしなくていいのに。
「……でもほんとは、ちょっと期待してたんだ。いつか、俺のこと好きって言ってくれないかなって。だから、すげえ嬉しかった」