素直になれない、金曜日
「……こんなとこで何してんの、おっさん?」
後から思えば、もっと良い手段があったかもしれない。
通報でもすれば逮捕案件だったかもしれないし、なにも自分で対処しなくてもよかったかもしれない。
だけど、そのとき中年男の腕を捻りあげた俺の真ん中には、
『あの子を助けたい』
それだけしかなかった。
放っておけなかった。
彼女になぜか目を奪われて。
俺に腕を捻られたそいつは、そそくさと退散していった。……最低だろ。
とりあえず一件落着か、とひと息ついて、その場に残された彼女に声をかけた。
「よかったな。……何もなくて」
愛想のない俺の声にぱっと顔を上げた彼女は 少ししたのち、ぱたぱたと涙を零しはじめた。
さっきの出来事への恐怖からなのか、それとも助かったことに対する安堵からなのかはわからなかったけれど、余程の緊張状態だったんだろう。
そんな彼女の涙は何故かとても綺麗に見えて。
思わず息を呑んだことがばれないように、自分のまだ使っていなかったハンカチを彼女に差し出した。
つうか、この制服ってうちの高校の─────。
見覚えはないけれど、こんな子うちの高校にいたんだな、と妙に関心する。