素直になれない、金曜日


勢いよくドアを開けて、がばっと頭を下げて、一呼吸おいて頭を上げた。




「欠席かと思ってた」



顔を上げたその先には、もちろん時間通りに来ていたはずの砂川くん。




「本当にごめんなさい!!」


「いいよ、別に。怒ってないから」



「でも……」


「じゃあ、作業分担してくれる?俺、貸出するから返却の方よろしく」





平謝りする私をやんわりと制して
カウンターの椅子に座るよう促した。


そんな砂川くんの様子にほっと胸を撫で下ろす。



それからは特に言葉を交わすこともなく、お互いに黙々と作業に専念した。





沈黙は苦手だ。



だって、緊張するし、“何か話した方がいいのかな”って不安になるから。

焦って口を開いて失敗するまでがお決まりのパターン。




だけど。




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