素直になれない、金曜日
いつのまにか、すぐ後ろに来ていた砂川くんに促されるままに席を立つ。
私に代わってコンピュータに向かった砂川くんは、手馴れた様子でマウスとキーボードを操る。
その鮮やかな手捌きに見蕩れているうちに砂川くんは手を止めていた。
「はい、直った」
「ほんと……っ?」
「よくあるエラーだったから」
あくまでも涼しい顔の砂川くん。
「本当に、ありがとうございます……っ」
「それ、やめれば?」
「それ、って……」
「敬語。俺ら同級生なんだし」
言われてみれば、その通り。
砂川くんがなんだか大人っぽいから敬語を使っていたけれど、たしかにその必要はない。
「じゃあ、ありがとう……?」
「うん」