素直になれない、金曜日
敬語をやめると、少し距離が近づいた気がして心が浮つく。
「砂川くんって、すごいんだね!」
「は?」
「あんな一瞬で直しちゃうなんて、すごいよ」
きらきらした目で見つめれば、砂川くんは気まずそうに顔を背ける。
「いやあれ、そんな大したことじゃないし」
「それでもすごいよっ!」
すごい、すごい、と繰り返す私を砂川くんはちらりと一瞥したかと思えば。
「ふはっ、はは」
「え?な、なんで……」
突然声を上げて笑った砂川くんに呆気にとられる。
でも、それより砂川くんの屈託のない笑顔に目を奪われた。
これで二度目だ。
あの日……砂川くんに初めて出会った日。
あの日もそうだった。
砂川くんの笑顔は、どうしてか私を惹き付ける。
そのくしゃっとした笑顔をまた見たい、って思うんだ。