素直になれない、金曜日
「桜庭さん」
砂川くんが口を開いて、私の名前を紡ぐ。
「今日の放課後、空いてる?」
「へっ……!?」
あまりに前触れもなく、突然のことで
変な声が出てしまった。
今日の放課後、空いてる?……って。
「えっと、特に予定はないよ」
戸惑いつつもそう答える。
だけど、どうして?
そんな私の疑問はすぐに解決した。
「あのさ、よかったら葵依と会ってやって欲しいんだ」
「葵依ちゃんと?」
「そう。葵依が桜庭さんのこと……すごく、気に入ってて。会いたいってずっと言ってるんだけど」
砂川くんの妹の葵依ちゃんに会ったのは、
はじめに会った一度きり。
そのたった一度きりで、また会いたいと思ってくれるなんて。
純粋に嬉しくて、頬が緩んだ。