素直になれない、金曜日
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「恭ちゃんっ!待った?」

「んーん、別に。当番おつかれ」



あのあとすぐ、そういえば恭ちゃんと一緒に帰る約束をしていたことを思い出して。


慌てて走ってきたら、案の定既に恭ちゃんは校門に寄りかかって私を待っていた。


帰り道を歩き始めてすぐ、恭ちゃんは私に紙袋を寄越した。




「誕生日おめでと」

「わっ、ありがとう!」



紙袋の中身をのぞくと、そこには私の好物が。



「おまえ、それ好きだよな」


「うん!恭ちゃんとこの豆腐ドーナツ、ほんとに美味しいんだもん……!」




ふわふわの豆腐ドーナツ。


恭ちゃん家は、老舗の豆腐屋さんだ。
豆腐はもちろん美味しいんだけど、常連客にひそかに人気なのがこの豆腐ドーナツなの。


素朴な甘さが最高で、ちょっとだけ温めてふわふわほかほかの状態で食べるのが至福なんだよ。


うきうきの気分で歩いていると、恭ちゃんは少し首を傾げた。




「いいことでもあった?」

「えっ?」

「今日のひより、なんか嬉しそう」




恭ちゃんが鋭く指摘する。

私って、そんなにわかりやすいのかな。




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