素直になれない、金曜日
複雑な気持ちだけど、だからって隠しているわけじゃないし。
ためらわずに恭ちゃんに見せたのは、砂川くんから貰ったクッキー。
「貰ったの」
「へえ、女の友達?」
Happy Birthday、とクッキーに器用にアイシングで描かれた文字に見入りながら恭ちゃんが何気なくたずねる。
女の……。
思わず笑ってしまいそうになりながら、首を横に振った。
「ううん、男の子」
そう言うと、恭ちゃんは驚いたように目をぱちくりとさせた。
その反応もわからなくはない。
恭ちゃんは少し逡巡したあと、ずばり言い当てた。
「もしかして砂川?」
「そう、砂川くんが私にって」
思い出すだけで嬉しくて嬉しくて。
緩む口元を隠さずにそう言えば、恭ちゃんが感心したように息をついた。
「あいつ、思ってたよりいい奴なんだな」
恭ちゃんの言葉に心の中で同意しながら、可愛いクッキーに見惚れていると袋の中にメッセージカードが入っていることに気づいた。
そのことに今はじめて気づいて、慌てて袋の中から折り畳まれたカードを取り出して。