素直になれない、金曜日


出会ったときから、なんとなく気づいていた。



だけど、私なんかが手を伸ばしてはいけない世界だと思ってたから。

たとえば今視線の先にある夕日のように、眩しくて遠いものだと思ってたから。




ずっと、ずっとごまかしていた。
気づいちゃだめだと、認めちゃだめだと心の中で鍵をかけていた。





─────でも、もう降参だ。





好き。




砂川くんが好きだ。
砂川くんに、恋をしている。




無意識にとめていた息を、ふーっと吐き出した。



砂川くんを見つけただけで、どきどきしておかしくなる。

彼の一言一句、一挙一動に心の中を掻き乱される。




そんなの、もうずっと前からで、最初からで、他の言葉をいろいろ当てはめてみたけれど、結局この気持ちを恋という言葉以外で表す方法なんて私には見つけられなかった。



出会ってまだ一ヶ月ほどしか経っていないけれど、まっさかさまに落ちている。


きっとまだ落ちていく途中で、きみを知るたび、これからもっと深く落ちていくんだと思う。


もう抗えないし、引き返したりなんかできない。



でももうそれでもいいやと思うくらいに、私の初恋はもう全部、砂川くんのもの。





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