素直になれない、金曜日


認めてしまえば驚くほど簡単で。

恋をするって難しいことだと思っていたから、おかしくなって、ふふ、と笑い声を零すと恭ちゃんが怪訝そうな表情を見せる。


だけど、恭ちゃんは何も言わずにぽん、と手のひらを私の頭の上に乗せた。




「よかったよ、ひよりが嬉しそうで」





私はこくり、と頷いた。

恭ちゃんが夕日を見つめながら言う。





「楽しめよ、高校生活」




それは、私より先に生まれた恭ちゃんだからこそ言える言葉で。

それはまた、私のことを誰よりも知っている恭ちゃんだからこそ言える言葉だった。




高校生活を楽しめるかどうかは、まだわからないし私にはハードルが高いかもしれない、けれど。




好きな人ができたよ。

私の世界は、高校生になって少しだけ変わったよ。




心の中でそう呟いたところで、ちょうど家の前に着いて。

手を振って恭ちゃんと別れた。




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