素直になれない、金曜日
『多数決を……』
がやがやとざわめく教室の中で、たった一人の声が────それも、か細い私の声なんかが届くわけがない。
誰ひとりとして教卓の方を向くことはなかった。
言葉にならない想いを閉じこめるようにぎゅう、とスカートの裾を握って俯く。
すると、後ろの方からよく通る声が聞こえた。
『ねえ、わたし考えたんだけど』
席を立って発言をしたのは、クラスの人気者だった女の子で。
みんなは一斉にそちらを振り向いた。
『その二曲からじゃなくて、この曲にするっていうのはどうかな?』
候補にあがっていた曲とは全く別の、聞きなれない曲名を挙げて、そのワンフレーズを彼女が口ずさんだ。
『────っていう曲なんだけど、候補にあがってた二曲に歌詞の雰囲気も似てるし、曲もいいとこ取りっぽい感じでしょ?』
────いいね、それ。
誰かの呟きを皮切りに、クラス中が賛成モードになる。
『いいじゃん!』
『それにしようよっ』
あちこちから聞こえる賛同の声。
ひとしきり盛り上がったところで、発案者の女の子は前に立っている私の方を見て微笑んだ。