素直になれない、金曜日
きっと、助けてくれたんだと思う。
みんなの前に立って、どうすることもできずにうろたえて不安に染まっていた私に手を差し伸べるために、彼女は発言してくれたんだと思う。
私のために、クラスのために。
『じゃあ、自由曲は───で決定でいいてすか』
提案してくれた曲名を、私の声に載せる。
……ちゃんとクラスの意見がまとまったから、これでいいのに。
いいはずなのに。
湧き上がる歓声に耳を塞ぎたくなった。
『本当にありがとう』
女の子にそう言って頭を下げた。
クラスをまとめたのは私じゃない、彼女だ。
私の声には見向きもしなかったみんなは、彼女の声なら振り向いた。
いつだってそうだった。
クラスを動かしているのは明るくて華やかで人気な誰かで、わたしはそれに付いていくだけの付属品にしかなれない。
クラス委員長になったからって、それは変わらなかった。
だったら私がここにいる意味って何なんだろう。
みんなの前に立ちながら、私は不思議で仕方がなかった。
────そういう、どうしようもなくやるせない気持ちになったとき、すくい上げてくれたのはいつもお母さんだった。
だけど、そのときはタイミングが悪かったんだ。