彼は高嶺のヤンキー様(リクエスト編)
―烈司に言われなくても、俺は凛を大事にしてるっつーの!!―
(そういうことじゃねぇーんだよ・・・!!)
マブであり、弟みたいな瑞希の反論を思い出し、イラッとした。
「あー!クソッ!!瑞希をギャフンと言わせてー!」
「その策、ないこともない。」
むしゃくしゃしながら吐いた言葉に返事が返ってくる。
「マジ?」
思わず聞き返せば、悪そうな笑みを浮かべながら、俺の隣に伊織が座る。
どうやら、俺とからむだけの時間はあるらしい。
(つーか、立ち止まった時点で、時間はあるってわかってんだけどな。)
「どーすんよ?」
「小動物を使う。」
「え?凛たん?」
小動物というのは、俺達のお気に入りの後輩のこと。
瑞希がすごく可愛がっている子。
まぁ、喧嘩のきっかけになった人物だ。
「瑞希をギャフンと言わせるなら、瑞希の弱点を使えばいい。」
「それは俺も思ったけどよ~」
伊織の言い分はわかる。
現役時代は、その悪知恵でいくつもの半グレとヤクザの組・・・いやいや、他の族をつぶしてきた頭脳だ。
「わかってるなら、なぜしない?」
「凛たんにバレたら嫌われるじゃんか?」
「ストレートだな。」
〔★烈司は正直だった★〕
誰かに媚びる気はねぇが、やっぱり、良いお兄さんという立場は守りたい。
そんな俺に、ゴミを見る目で伊織は言った。
「馬鹿者。凛道にバレない方法を使え。」
「そうだけどよ~凛たんさ、瑞希のこととなると、鋭くなるじゃねぇか?」
「ば・か・も・の。そこが『盲点』だ。」
重いため息をつくと、メガネをはずす伊織。
「瑞希も凛道も、お互いのこととなると、冷静さを失う。エサさえのやり方を工夫すればいい。」
「うっわーエゲツねぇ予感しかしねぇ~な~?」
「わかってるじゃないか、LEON?」
職業名で呼ぶと、メガネをかけなおす腹黒男。
「ちょうど、暇を持て余していた。烈司、お前に瑞希をギャフンと言わせる策を与えてやろう。」
「うわぁ~頼もしい~本当にイオリンが、味方でよかったと思うぜ~」
拍手しながら言えば、無表情な男が口元だけで笑う。
それに俺も楽しい気持ちで口の端をゆるめながら、伊織の口元へと耳を近づけた。