彼は高嶺のヤンキー様(リクエスト編)
「ふふふ、じゃあイチゴにしとこっかなぁ普通には飽き飽きしてるし。」
「かしこまりました!カフェ・スラブのイチゴでよろしいですね?」
言葉遣いも、発声音もきれい。
仕事だからじゃなくて、普段から敬語を使ってんのかも。
これ、貴重な天然男子だ。
(さて、どいつがこのゆるキャラを落とせるか―――――)
「なに言ってんだよ、ボケ店員。ルノアは、おすすめ聞いてんだろうが。」
「アダム。」
せっかくまとまったオーダーにアダムが文句をつけた。
その態度にカチンとくる。
(なにそれ?あたしの決めたことに文句つけてるわけ?)
「一番出てるじゃねぇだろう?ちゃんと接客しろよ・・・!」
「すみませーん、僕の言い方が悪かったですね?今夜は『カフェ・スラブ』が特に『美味しい』って買ってくれたお客様がおっしゃるので販売前の試飲で僕も、同じように思ったので、勧めちゃいまして。」
見た目に反して、言われた方は大人の対応だ。
それでよけに、あたしもアダムも、ムカついた。
「ああ?テメーの好みを俺の女に押し付けるのかよ!?」
アダムはゆるキャラ少年に。
(それでいいって言ったの、聞こえてなかったのかよ?)
あたしはあたしの男であるアダムに。
メンチをきるアダムに、少年は真面目な顔で訴える。
「とんでもない!ただ、嫌いじゃなかったら、ハートのお姫様にも飲んでほしいなぁーて?」
ハート?
「はあ?『ハート』だぁ!?」
『お姫様』はあたしのことだろうけど、まさか・・・『ハート』って・・・!?
小指に意識が集中しつつも、ゆるキャラ少年に聞いた。
「もしかして、あたしのこと?」
あたしが話しかければ、ゆるキャラに笑顔が戻った。