彼は高嶺のヤンキー様(リクエスト編)
「はい♪小指につけてるハートの指輪、すごく似合ってますから。」
「指輪?」
(やっぱりそうか・・・!)
左手の薬指につけてる。
それを誉めているらしいが――――――
(それってどーよ?)
浴衣は京都の老舗のオーダーメイド。
巾着も下駄も高級品。
物が物だから、素人にわからないのは仕方ない。
だけど髪は、行きつけの高級エステサロンでセットした。
指環以外のアクセサリーはブランド品。
なのに、よりによって誉めたのは一番の安物。
(まさに貧乏人らしいからいいけどさ――――――・・・)
引っ掛かる少年の言葉。
―小指につけてるハートの指輪、すごく似合ってますから。―
その言葉が、頭の中で反響する。
いつも通り聞き流すのに、気づけば『ゆるキャラ』と話し込んでいた。
「・・・指輪だけ?」
「いいえ。全体的に可愛いけど、一番指輪が目立って見えましたから。素敵な引き立て役になってると思いまして♪」
(目立ってる・・・)
「・・・ふーん。」
確かに小指の指輪は安物。
けど、ぶっちゃけ気に入ってはいる。
今日のネイルも、この指輪にあわせてデコッたぐらいだからね。
さすがに、このゆるキャラちゃんはそこまでわからないだろうけど―――――――――
(取り巻きも彼氏も気に留めなかったのに、初対面の男は褒めた。)
面白いわ、こいつ。
あたしの周りにいないタイプ。
〔★気づいてないだけで、入学時からずっといる★〕