彼は高嶺のヤンキー様(リクエスト編)




「はい♪小指につけてるハートの指輪、すごく似合ってますから。」

「指輪?」




(やっぱりそうか・・・!)



左手の薬指につけてる。

それを誉めているらしいが――――――




(それってどーよ?)




浴衣は京都の老舗のオーダーメイド。

巾着も下駄も高級品。

物が物だから、素人にわからないのは仕方ない。

だけど髪は、行きつけの高級エステサロンでセットした。

指環以外のアクセサリーはブランド品。

なのに、よりによって誉めたのは一番の安物。




(まさに貧乏人らしいからいいけどさ――――――・・・)




引っ掛かる少年の言葉。




―小指につけてるハートの指輪、すごく似合ってますから。―




その言葉が、頭の中で反響する。

いつも通り聞き流すのに、気づけば『ゆるキャラ』と話し込んでいた。






「・・・指輪だけ?」

「いいえ。全体的に可愛いけど、一番指輪が目立って見えましたから。素敵な引き立て役になってると思いまして♪」




(目立ってる・・・)

「・・・ふーん。」





確かに小指の指輪は安物。

けど、ぶっちゃけ気に入ってはいる。

今日のネイルも、この指輪にあわせてデコッたぐらいだからね。

さすがに、このゆるキャラちゃんはそこまでわからないだろうけど―――――――――





(取り巻きも彼氏も気に留めなかったのに、初対面の男は褒めた。)




面白いわ、こいつ。



あたしの周りにいないタイプ。



〔★気づいてないだけで、入学時からずっといる★〕



< 74 / 100 >

この作品をシェア

pagetop