彼は高嶺のヤンキー様(リクエスト編)



「いいよ。あたし、金はあるから。あたしとアダムの分は最後でいいから、先にこいつらのオーダーを聞いてやって。」

「ははは!大盤振る舞いだな、お姫様?じゃあ、順番に聞いて行こうかな?」



接客モードで店長らしい奴が言う。



つーか、オーダーしたいのはお前じゃない。

そう思ったのは、あたしだけじゃなかった。



「はいはい!まずは、あたしの注文聞いてぇ!!」

「ちょっと、私が先よ!可愛い彼氏聞いてくれるぅー?」



さやか達を先頭に、ゆるキャラの方へと押し寄せる連れの女子達。

そんなメス達を不機嫌に見ながら、おごりに弱い男達も動く。



「おい、俺が先だろう?」

「なによ、レディーファーストでしょう!?ねぇ、可愛い彼氏?」

「コーヒーの王子様でもイケるよねぇ!?」

「浮かれすぎだぞ、お前ら!?」

「チョコ、ちゃんとおうかがいしろよ?」

「あ・・・はい。」



(『チョコ』?)



ドリンクを作る店主が、ゆるキャラを見て呼んだ単語。



(それがこいつの名前か?)



「チョコって言うの?」

「え?」



オーダーをメモしようとしている少年の、目の前まで行って問いかける。



「名前、『チョコ』って言うの?本名?てか、どんなあだ名?」



あたしの質問に、ピエロのようなユーモアな口調で陽気に答えた。


「それがねぇ~動き方がチョコチョコしてるから、『チョコ』って言われてるんだ~!でも、安心してください!溶けませんから♪あははは!」

「ぷっ!やだぁ~なにそれ?」



見た目通り、想像しやすいイメージ。

自分のこと語る様子に、いやらしい自虐さがない。

客相手に、へりくだりすぎてない。

だから、聞いていても嫌味を感じない。




(『天然100%』の天真爛漫ボーイかよ?)




思わず笑えば、他の奴らがハシャグ。






< 79 / 100 >

この作品をシェア

pagetop