彼は高嶺のヤンキー様(リクエスト編)
「いいよ。あたし、金はあるから。あたしとアダムの分は最後でいいから、先にこいつらのオーダーを聞いてやって。」
「ははは!大盤振る舞いだな、お姫様?じゃあ、順番に聞いて行こうかな?」
接客モードで店長らしい奴が言う。
つーか、オーダーしたいのはお前じゃない。
そう思ったのは、あたしだけじゃなかった。
「はいはい!まずは、あたしの注文聞いてぇ!!」
「ちょっと、私が先よ!可愛い彼氏聞いてくれるぅー?」
さやか達を先頭に、ゆるキャラの方へと押し寄せる連れの女子達。
そんなメス達を不機嫌に見ながら、おごりに弱い男達も動く。
「おい、俺が先だろう?」
「なによ、レディーファーストでしょう!?ねぇ、可愛い彼氏?」
「コーヒーの王子様でもイケるよねぇ!?」
「浮かれすぎだぞ、お前ら!?」
「チョコ、ちゃんとおうかがいしろよ?」
「あ・・・はい。」
(『チョコ』?)
ドリンクを作る店主が、ゆるキャラを見て呼んだ単語。
(それがこいつの名前か?)
「チョコって言うの?」
「え?」
オーダーをメモしようとしている少年の、目の前まで行って問いかける。
「名前、『チョコ』って言うの?本名?てか、どんなあだ名?」
あたしの質問に、ピエロのようなユーモアな口調で陽気に答えた。
「それがねぇ~動き方がチョコチョコしてるから、『チョコ』って言われてるんだ~!でも、安心してください!溶けませんから♪あははは!」
「ぷっ!やだぁ~なにそれ?」
見た目通り、想像しやすいイメージ。
自分のこと語る様子に、いやらしい自虐さがない。
客相手に、へりくだりすぎてない。
だから、聞いていても嫌味を感じない。
(『天然100%』の天真爛漫ボーイかよ?)
思わず笑えば、他の奴らがハシャグ。