彼は高嶺のヤンキー様(リクエスト編)



「うわ、こいつサイテー!」

「けっきょく、金が大事ってかぁ?」

「やっぱ、媚びてたんだぜ?あざとーい!」



ゴミ原にするようにはやし立てる。

そんなあたしと周囲に、ゆるキャラは静かに首を横にふった。



「そんなんじゃないですよぉ!」

「チョコ、お支払いを名乗り出たお嬢様とその彼氏さん分が出来たぞ?」

「はいはい、ただいま!」







(まだ、あたしが話してる途中だぞ・・・!?)








ゆるキャラに、ドリンクを渡す奴にメンチをきる。

店主はあたしの視線に気づいてるはずなのに、無視しやがった。

ドリンク、飲んじゃってる奴ばっかだから、支払い拒否はできない。

ゆるキャラの言う通りにもなっちまう。

けど、引き下がれないから、商品を褒めながら、他の客が寄り付かないように、たむろして営業妨害しちまうか?

ゆるキャラの動きを見ながら思案する。

ジーと見ていたから、中坊に意識を集中させていたから、『聞き取れた』んだろう。





「・・・・・・・いじめじゃないよね?」

「はあ?」





飲み物を受け取る瞬間、そっとあたしの小声で耳元で、ゆるキャラ系の中坊がつぶやいた。





「君、いじめられてるとかじゃないよね?大丈夫・・・?」





思わず、首ごと中坊を見ていた。

可愛さも、愛くるしさも、明るさもない、真っ直ぐで真面目な表情。

それがあたしに、ゆるキャラが向けてきた顔。

自然と、顔から力が抜けた。





(いじめ?)





メンチを切ることを、忘れてしまった。






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