彼は高嶺のヤンキー様(リクエスト編)
「・・・だめだよ、いじめ。ちゃんと、強がらずに言うんだよ?」
ゆるキャラが、『チョコ』と呼ばれる中坊が口にしたのは、あたしがいじめられてないかを心配する発言。
「あんた・・・!?」
(あたしが周りにおだてられて、ATMをしてる馬鹿な金持ちのいじめられっ子と、勘違いしてるわけ!?)
あまりの真剣な目力に、あたしは声を出そうとしたが=―――――――
「はかなそうに、寂しそうに見えたから。」
強い口調でさえぎられた。
「ごめんね、もう言わないよ。」
悲しそう・・・?
瞬時に、胸がしめつけられた。
はかない?さみしそう?このあたしが?渕上ルノアの印象だというの?
小さいながらも、はっきりとした口調でそう言われた。
聞きなれない言葉は、あたしに戸惑いと、胸の奥底に火をつけた。
「選んでくれて、本当にありがとう♪」
何事もなかったようにニッコリと、ゆるキャラは笑う。声の大きさを元に戻し、完璧な笑顔であたしに謝った。
「お金も・・・失礼しちゃって、ごめんなさい!はい、おつりでーす。」
札を手渡された時、わずかに相手の肌と触れあった。
触ったか、触らなかったか、一瞬のことだけど、意識した。
これで、客と店員の関係は終了した。
「人混みも多いから・・・・いろいろ気をつけて下さいね?」
ひどく穏やかな声で、あたしを気遣う『チョコ』君。
「お買い上げ、ありがとうございました♪」
「ありがとうございます!」
チョコレートのように甘い、甘ったるいチョコの声。
あたしとチョコのやり取りは、周囲には聞こえなかった。